『読みたいことを、書けばいい。』田中泰延 著
この本を読んだ時、とにかくニタニタが止まらなくなった。
長年電通でコピーライターの仕事をし、現在は青年失業家として活躍中の田中泰延(ひろのぶ)さんが、まるで私に話しかけるように、活字とは思えないほどエアリーなボケをかますからだ。
そして前のめりに「ふむふむ。」と話を聞いているうちに、自分がいかに浅いかを思い知らされるのだった。
"事象とは、つねに人間の外部にあるものであり、心象を語るためには事象の強度が不可欠なのだ。"
この本を読めば、ひろのぶさんが「調べて調べて調べまくる方」であることがとてもよくわかる。まずは、事象が手元にあることをベースに、そこから彼の言葉は料理されていく。
どれだけの知識が頭に入っているのか計り知れない。本来ものを書くには、ものを語るには、そうあるべきなのだと、私はかたく閉じてきた目を無理やり開いて目薬をさされた気持ちになった。
ぐぅーーーーーーー染みる!!!!!!
(でもなんか気持ちいいーー!!!)
ラジオのしゃべり手である私がいつも抱える不安な気持ち。
それは「とことん調べる」という高い山を前に、ズルしてきた日々があるから。
結局自分は空っぽなんだと認めるのが怖くて、知らないふりをしてきたが、ついにそれと向き合う機会が生まれたのだ。
よし、重い腰を上げよう!!そう思ったも束の間。
なんと、そのひろのぶさんと仕事でご一緒する機会が訪れてしまう。
ベルリン・フィル『ベートーヴェン第九』4Kハイレゾ上映会で、ひろのぶさんのトークショーMCを務めるというお仕事!
ひぃーーー!!!光栄すぎるが、大変だ!!
わたしはまだ空っぽなのだ!!
なにを喋ったら良いのだろう…
一言も喋れなくなるのではないか。
調べて調べて調べまくる時間は……
(10分経過)
ええい!!悩んでもしょうがない!
こういうときは、ドーーンと会うのだ!
そして、ランチ兼打ち合わせの日がやってくる。
ドキドキしながら平静を装い、約束の時間に遅れないように家を出ると私のスマホが光った。画面を見ると、グループメッセンジャーに立て続けにひろのぶさんから10通もの連絡が来ていた。
最初の1通目で「山手線を逆方向に乗ったので10分ほど遅れる」ということは分かったのだが、その他は
『私は遅れてまいりますのでごめんなさい、注文だけしておきます
餃子と春巻き、あとはマックシェイクストロベリー味です!!ナゲットのソースはマスタード派ですがそこは遅刻する身ですので皆さんに従います』
と、謎のランチ大喜利が繰り広げられていたのだ。もう、訳がわからない(笑)
ちなみにランチの場所は、マクドナルドでもなければ、中華料理屋でもない。
なんという破壊力だ。
時間に遅れるという「陰の空気」が全く漂っていない!むしろ「陽の空気」に変えているではないか。すごい、空気清浄機か。
そして、初対面という壁を、笑いながら肩からぶち抜いてくる。おそろしい!!笑
私に張り付いていた脆い鎧が、音を立てて崩れた。
構えていた自分が馬鹿みたいだと思い始めたら、電車の中でニタニタが止まらなくなっていた。
あぁ、本を読んだ時のニタニタはこれだ。
純粋に「たのしい!」と思えるワクワク感だ。
この本のタイトル通り「読みたいことを、書けばいい。」としてひろのぶさんが書いたのだから、この本「自体が」ひろのぶさんなのだ。
私はかってに
"事象とは、つねに人間の外部にあるものであり、心象を語るためには事象の強度が不可欠なのだ。"
という言葉に打ちのめされすぎて、ひろのぶさんを見失っていたのかもしれない。
ひろのぶさんは、とっても愉快な大阪の人なのだ。
結局ひろのぶさんはメッセンジャーで、また違う電車に乗りそうになるというハプニングと、飯田橋の「ラムラ」が「国連ビル」に似ていることを我々に報告し、30分くらい遅れて到着した(笑)
初対面のときにニタニタ笑いながら挨拶してしまったのは初めてかもしれない。
美味しいイタリアンランチの味を覚えていないくらいたのしい出会いだった。
26日(月)のトークイベント、とっても楽しくなりそうだ。MCとして登壇する身である私が一番楽しみであり、この仕事のお話をいただけて本当に感謝している。
事象集めに関しては、
とりあえず、はじめの小さな一歩から踏み出そうと決めた。
まずは好きなものから、焦らずゆっくり調べていこう。
よおーし!『箸』だ!調べるぞー!
これからボチボチやるぞ!の夏。