そのメッセージは「Hi Alissa」から始まった。
娘と私はたった今、映画を観たの。
それは『Hachiko』にまつわる本当のお話だったわ。
それで私、思い出したの。
いつもあなたと待ち合わせしていた犬の像を。
今、はっきりと理解したわ。
私たちが会う場所には、素晴らしいストーリーがあることを。
待ちきれない。またあそこへ戻って、あなたに会いたいわ。
今、ハチ公像が意味する本当のストーリーを理解した。本当に美しいストーリーなんだけどね、とっても悲しくって。わたし、泣いちゃったわ。
そんなメッセージだった。
そう、我々がいつも待ち合わせしていたのは渋谷のハチ公前だった。
たまたま新幹線で席が隣だったニュージーランド人の彼女。
会話が盛り上がり連絡先を交換した翌日、娘や息子に日本のお土産を買いたいのにどこに売っているかわからなくて困っているとメールが来た。
これも何かの縁かなと、我々はその日 渋谷で落ち合い買い物をした。
「ありがとうありがとう」と何度も涙を浮かべながら言う彼女は、たぶん日本にポツンと放り出されて孤独だったのだろう。私は「またね」と言って彼女と別れた。
それが彼女との出会い。
再会は突如、2年後に訪れた。
旦那を連れて日本に遊びに来ると彼女から連絡が来たのだ。私に旦那を是非会わせたいということで、渋谷の天ぷら屋でご飯を食べた。旦那は日の丸がついたTシャツを着て終始微笑んでいた。
何気なく待ち合わせては会っていた場所。
渋谷 ハチ公前。
"the statue of Dog at Shibuya"
といえば分かりやすいかなと思って、私が安易に選んだ場所。
次に彼女とあそこで会うときは
また違った気持ちで会えるはずだ。
片耳だけパタと折れた、主人を待ち続ける像の前で
わたしはニュージーランドの彼女を待ち続けるのだろう。