三、四年ぶりくらいにマニキュアを塗っている。
近々結婚式に出席する予定があるから。
テレビの仕事があろうとも、丸裸の丸爪で挑んでいた私。
手荒れもひどいし、爪先でオシャレを楽しむ余裕なんざ、カケラもなかった。
そんな時間があるならネコを撫でていたいし、ゆっくりコーヒーでも飲みたいし、なんなら昼寝したい。そう思っていた。
ドレスを着るとなると、とたんに手元がさみしくなる。アクセサリーだけじゃ物足りなく、ぼんやりとしてくる。
だから、今回塗ることにしたのだ。
子どもを寝かしつけ、歯を磨き、ネコをブラッシングし、いざ!と。
鼻にツンとくる香りはどこか懐かしい。
塗るのが下手くそなので、2度3度も塗らない。
一度塗ってトップコートを塗るだけ。
なのに
なぜか少しテンションがあがってくる。
セーラームーンの変身シーンで指先に色がぱぁっと乗ったときのような、別の自分に変身するような気持ち。
あぁ いいもんだな たまには。
ネコが(なんだこれは!!くさいぞ!)と鳴いてくる。
かまうもんか。
貴重な貴重なわたしの時間だい。
『マニキュアが乾くまで
どうかそっとしておいて』
そんな言葉が浮かんだ瞬間、ちあきなおみの「マニキュアがかわくまで」が脳内再生された。
(くさいぞ!くさいぞ!)と鳴くネコ。